【1】飲食店の法人化で最初に決めたい経理ルール|帳簿や現金管理が乱れる原因とは

飲食店を法人化する際には、会社設立の手続きだけでなく、日々の売上や現金をどのように管理するかについても、最初にルールを決めておくことが大切です。
飲食店では、現金売上やクレジットカード売上、食材の仕入れ、備品の購入など、日々さまざまなお金が動きます。こうしたお金の流れを曖昧なままにしていると、売上伝票の内容が不足したり、領収書の整理が後回しになったり、レジの現金と帳簿上の現金が合わなくなったりします。

特に個人事業から法人へ移行する場合には、これまでのやり方をそのまま続けるのではなく、法人としての経理ルールを整えておく必要があります。
本記事では、これから法人化を考えている飲食店のオーナーに向けて、最初に決めておきたい経理の基本について解説します。
飲食店の法人化で最初に決めたい経理ルール

飲食店の経理は、複数の項目が同時に乱れやすい

飲食店の経理では、次のような項目が乱れやすくなります。
・売上伝票の記載
・レジ内の現金管理
・領収書の保管
・仕入代金の支払い
・現金売上の銀行入金
・クレジットカードなどの入金確認


どれか一つだけに問題が生じるというよりも、売上伝票、領収書、レジ金などが同時に分かりにくくなっていくことがあります。

例えば、売上伝票に「1,000円」と金額だけが書かれており、日付や内容が記載されていないケースです。バーやスナックなどでは、席やテーブルごとに会計を行い、合計金額だけを手書きで残していることがあります。しかし、日付や内容が分からなければ、いつの売上なのかを後から確認できません。レジの現金と合わなかった場合にも、どの取引に原因があるのか分からなくなります。

売上伝票には日付・金額・取引内容・決済方法を記載する

手書きの売上伝票を使用する場合には、少なくとも次の内容を残しておきましょう。
・日付
・金額
・取引内容
・決済方法


金額だけでは、いつ、どのような売上があったのかを後から確認できません。
例えば、売上伝票に「12,000円」と金額だけが書かれていても、それが現金で受け取った売上なのか、クレジットカード決済なのか、QR決済なのかが分からなければ、レジ内の現金や後日の入金額と照合しにくくなります。手書きの伝票を使用する場合には、次のように簡単な内容を残しておくと確認しやすくなります。
・8月1日 テーブル3番 ドリンク・フード代12,000円 現金
・8月1日 カウンター2名 コース料理代8,500円 カード
・8月1日 テーブル5番 ドリンク代6,200円 QR決済


このように、日付、金額、取引内容に加えて、決済方法も記載しておくことで、営業終了後に現金売上、カード売上、QR決済の売上を確認しやすくなります。
手書きの売上伝票は「決済方法」まで残すと確認しやすい
POSレジを使用している場合には、現金売上やクレジットカード売上を日ごとに確認しやすくなります。
一方、手書きの伝票を使用する場合には、記載する項目をあらかじめ決めておくことが大切です。
売上を正しく記録しておかなければ、レジ内の現金、銀行への入金額、カード会社や決済サービスからの入金額と照合することができません。飲食店では、現金、キャッシュレス(カードやQR)決裁など複数の決済方法が混在しやすいため、売上伝票の段階で決済方法を残しておくことが大切です。

現金売上は決めた頻度で銀行へ入金する

現金売上がある場合には、売上金を定期的に銀行へ入金します。
店舗によっては営業日の翌日に入金しているところもありますが、毎日入金するか、数日分をまとめて入金するかは、店舗の状況によって異なります。銀行が近くにあるか、硬貨を入金できるかといった事情もあるため、すべての店舗で同じ方法を取る必要はありません。
例えば、次のような方法が考えられます。
・営業日の翌日に入金する
・数日分をまとめて入金する
・週に一度、決まった日に入金する


重要なのは、売上金をいつ入金するかを決め、その方法を続けることです。売上記録の合計と銀行への入金額が合っていれば、現金売上の流れを確認しやすくなります。また、売上金を銀行へ入金せず、そのまま仕入れや経費に使っていると、銀行口座に売上の動きが残りません。定期的に入金しておくことで、通帳上でも店舗の売上の動きを確認しやすくなります。

売上金と経費の支払いを分ける

飲食店の現金管理で特に注意したいのが、売上として受け取った現金から、そのまま仕入れや備品の代金を支払うことです。売上として入ってきたお金と、経費として出ていったお金が混ざると、お金の流れが分かりにくくなります。

例えば、その日の売上金から食材や備品を購入したにもかかわらず、その支払いを記録していなければ、帳簿上の現金と実際の現金が合わなくなります。こうした処理が続くと、実際には現金がほとんど残っていないにもかかわらず、帳簿上では多額の現金が残っている状態になることがあります。決算時になってから原因を調べようとしても、どの支払いが記録されていなかったのかを確認するのは簡単ではありません。

店舗のお金と個人のお金を混ぜない

個人事業から法人へ移行する場合には、法人のお金と経営者個人のお金を分ける必要があります。店舗の売上金、店舗で使用する現金、経営者個人の財布が混ざってしまうと、どこから支払ったのか分からなくなります。同じ領収書であっても、店舗の現金から支払ったのか、経営者個人が立て替えたのかによって、会計処理は異なります。法人化の段階で、次のものを分けておくと管理しやすくなります。
・法人名義の銀行口座
・事業用のクレジットカード
・店舗で使用する現金
・経営者個人の財布やクレジットカード


食材や備品などの支払いを、事業用のクレジットカードにまとめる方法もあります。支払いの記録が残るため、現金で支払うよりも確認しやすくなります。
領収書や伝票は日々整理する

POSレジや会計ソフトは早めに設定する

POSレジや会計ソフトを利用すれば、現金売上やクレジットカード売上を管理しやすくなります。POSレジと会計ソフトを連携できる場合には、売上データを自動で取り込むこともできます。ただし、連携の設定が遅れると、設定前の売上が取り込まれない期間が生じることがあります。法人化や開業に合わせて利用する場合には、早めに連携を行い、売上の取り込みに漏れがないかを確認しておきましょう。

また、飲食店の経理を誰が行うかは、店舗によって異なります。経営者本人や家族が行う場合もあれば、税理士事務所へ資料を渡し、記帳代行を依頼する場合もあります。店舗側で経理を行うのか、税理士事務所へ依頼するのかについても、店舗の体制に合わせて決めることが大切です。

法人化の段階で経理の習慣を作る

飲食店の経理で大切なのは、最初にルールを決め、その方法を続けることです。法人化の段階では、少なくとも次の内容を決めておきましょう。
・売上伝票に日付、金額、内容を記載する
・売上金と経費の支払いを分ける
・現金売上を決めた頻度で銀行へ入金する
・店舗のお金と個人のお金を分ける
・領収書や伝票を日々整理する
・POSレジや会計ソフトを早めに設定する
・経理を誰が担当するか決める


飲食店ごとに、営業時間、決済方法、経理を担当する人は異なります。そのため、すべての店舗が同じ方法を取る必要はありません。

大切なのは、店舗の状況に合った方法を決め、開業や法人化の時点から習慣にすることです。 経理の方法に不安がある場合には、法人化した後ではなく、法人化を検討している段階で税理士へ相談しておくとよいでしょう。
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